理想と現実。それとも。【牛肉と馬鈴薯 国木田独歩】
どんな話?
明治倶楽部を舞台に男たちが現実主義を牛肉、理想主義を馬鈴薯に例えて議論をしていくという内容。
あまり長い話ではないので1時間くらいで読むことができます。
難しいけどかっこいい
恥ずかしながら初めましての国木田さん。
今回は青空文庫で読みました。
友人とタイトルを見つけた時に、『牛肉とじゃがいもってカレー?』『いや、肉じゃがじゃない?』と笑ったことがきっかけで読み始めましたが、すごくかっこいい。
何がかっこいいのかうまく言えませんが、読み終わってすぐの感想は「かっこいい」の一言です。
カレーとか肉じゃがとか言っててすみませんでした。
内容が哲学的だったり、少し昔の小説特有の硬い文体だったりしてちょっと難しかったです。
でも、読み終わった後のハッとする感じが気持ちよくて読み直すことが苦にならない作品でした。
時代が時代なので女は〜とか男は〜という書き方はありますが、全体的に結構刺さる内容です。
お酒を飲みながら話していることもあって登場人物たちがみんな感情的で、読んでいるだけでも明治倶楽部にいる人々の声が聞こえて来るように感じます。
ぜひ朗読で聞いてみたいと思いました。
『武蔵野』とか他の作品も読んでみたい!
個人的に最後の展開が好きだったので、ネタバレしたくなくてふわっとした感想になってしまいました。
このあとラストのネタバレです(読了後推奨)
賑やかで切ないラスト
上村が持論を話し、みんなで牛肉か馬鈴薯かと言い合った後岡本は自分の願いを打ち明けます。
「
喫驚 したいというのが僕の願なんです」
これなんですね。
岡本が何もかも捨ててでも追いたい願いというのは。
途中まで岡本は熱くこの願いについて語りますが、最後は笑って誤魔化します。
しかし、その顔には苦痛の色が浮かんでいる。
結局は自分の習慣に堕落してしまう哀しさ、周りが笑う中それを近藤一人だけが気づいているというのもまたいいですよね。